医学部が人気の理由って?

前章では医学部の受験者数や定員数、競争率から、近年の医学部の人気について見てきました。
ここでは医学部人気が高まっている理由について紹介します。

大学生の就職難

医学部の人気が高まっている理由としてはまず、大学生の就職難が挙げられます。
2000年代初頭から日本経済は深刻な不況に見舞われ、2008年のリーマンショック以降も大学生の就職活動は景気に大きく左右されてきました。
こうした要因もあり、就職が難化していることを感じた受験生の間では、卒業後の就職を見据えた大学・学部選びをすることが一般的になりました。
中でも就職しやすいといわれていたり、資格を取得できたりする学部が人気で、とくに難関の医学部を目指す人は増加しています。
社会的な情勢の影響もあり、かつて理学部や工学部を目指した優秀な学生が、安定を求めて国公立大学の医学部に流れているのです。

私立大医学部の学費値下げ

学費の値下げも医学部人気の要因といえます。一部の私立大学、主に首都圏の私立大学医学部では、学費の値下げを行っています。
追従して関西の私立大学医学部でも値下げを行うところが出てきました。これは優秀な学生の確保が目的であり、例えばこれまで学費の問題で国公立しか受験できなかった学生が私立大学も受験できるようになります。
受験者数の増加につながっていることからも、この試みは一定の成果が出ているといえるでしょう。

歯学・薬学部の人気の低下

他学部の人気低下というネガティブな要因もあります。医学部と同じ医療系学部である歯学部と薬学部ですが、近年人気が低下しています。
薬学部は2006年から6年制になったことで受験者数が減少しました。歯学部は首都圏を中心に医師数が多くなっていることが人気低下につながっています。
歯科医院数はコンビニエンスストアの店舗よりも多いといわれるほどなので、収益に苦心するのを見越した受験生が歯学部受験を控えている状況です。
このような他学部の人気低下により、同じ医療系である医学部に受験生が流れています。

国策による定員の増加

OECD(経済協力開発機構)の統計資料によれば、医師数が世界で最も多いオーストリアでは、人口1,000人あたり4.9人の医師がいます。
一方日本の医師は、人口1,000人あたり2.3人という危機的な状況となっています。超高齢化社会を迎えている日本では、今後も医師不足はさらに深刻化するでしょう。
こうした状況を受けて、文部科学省は医学部の定員増加を認めました。国立大学をはじめとして、多くの大学では医学部の定員が増加し、それに伴って受験者数も増加しています。
医師の社会的ニーズが高まっており、定員数や受験者数も増加傾向にあります。ただし定員数に比例して受験者数も増加しているため、医学部人気は依然高いままです。
医学部が狭き門であることは、今後も変わらないでしょう。